【紅の馬鹿】パーマが似合わなさ過ぎて泣いた
19歳の時、思い切って初のパーマをかけてみることにした。
なぜパーマをかけようと思ったのかと言うと、この時金髪ピアスにしていて「パーマにしたらもっとイケんじゃね」と思ったからだ。だが本当のところは、堅苦しい高校生活から解放されたことによる反動、要はただの「勢い」である。
1度髪を染めてしまったら、次も、その次も、と外見をバージョンアップしてみたくなるというわかりやすい行動原理だ。
早速、勢いだけの考えなしの私は、中学の頃から何度か世話になったことがある近くの床屋に行った。
床屋に貼り出されている料金表を見ると、5000円(くらいだった思う。)と書いてあった。少し高いなと思いつつも、わしゃパーマをかけるんじゃと勢いで店内に入った。
見慣れた40代くらいの店主が常連(たぶん)のおじいちゃんの髪を切っていた。先約がいたので、店に置いてある稲中卓球部を読みながら呼ばれるのを待った。
そして待つこと十数分、おじいちゃんが会計を終え、私の番が回ってきた。店主に「久しぶりだね。」と言われ私は「ゥッス」と挙動不審な会釈をした。
椅子に案内され「今日はどうしますか?」と尋ねられ、私はドキドキしながらもすかさず「パーマかけてください」と注文した。
私は(遂に言ってやった。)と、安心して肩をなでおろした。しかし、達成感に浸ってる間もなく店主から「どういう風なパーマにしたいの?」と聞かれて、
(どういう風に?パーマにどういう風とかあんの?)
とわけがわからなくなって頭が真っ白になってしまった。パーマのことを何も知らず勢いで来てしまったために、どう返したらいいかわからなくて焦った。
戸惑いながら「すいませんよくわからなくて…」と言うと、店主はすぐにヘアカタログを持ってきてくれて、この中から自分のイメージに近い写真を選んでくれと言った。
さすが店主。このフォローのおかげで変に恥をかかずに済んだ。ちなみに、この時の髪の長さは後ろと横で顎くらいまでの長さがあった。
カタログを見ながらだとイメージが湧きやすくて選びやすかった。とりあえず自分と同じくらい髪の長さで毛先の方が少しウェーブしているイケメンを指差して、こんな感じでと注文した。自分もこの写真のイケメンのようになれると考えただけで少し心が高揚した。
早速、シャンプーをしてもらい、ロットという髪を巻いて固定する道具をつけてもらった。
パーマは初めての体験だったので鏡でロットを巻いた自分の姿を見て、(これテレビでよく見る美容室でおばちゃんがやってるやつ…!)と無駄にテンションがあがった。
そしてロットが巻き終わったらパーマ剤をつけて、頭になんか被ってしばらく放置。その間、何もすることが無く、たまに店主に話を振られるも持ち前のコミュ障を発揮して会話は全く弾まなかった。何もしていないときは店内に流れるラジオに耳を傾けて時間が過ぎるのを待った。
しばらくしてロットを外し、シャンプーでしっかりパーマ剤を洗い流した。この時点で少し髪がウェーブしていたので(おっ、なかなかいい感じ?)と心が浮き立った。さらにドライヤーで乾かしたらどうなるのかわくわくした。
そして髪が乾きいよいよ初のパーマと対面した。
初めてのウェーブした毛先、ふんわりとしたボリューム感。今までに見たことない新しい自分が鏡に映っていた。その時、さっきまではなかった感情が湧きあがりこう思った。
「なんか思ってたのと違う…」
圧倒的ダサさ。
カタログのイケメンと見比べても、自分のパーマは圧倒的なダサさだった。見違えるような似合わなさ。どのくらいの変貌ぶりかというと、こんな感じ↓
柴犬がイメチェンを頑張ってみたけど、どこか違和感があるようなそんな感じだった。どこか無理してる感があるというか。(まあ、これはこれで見れなくもないが。)
もっと言うと「紅の豚」の主人公ポルコに近い感じだ。横の髪が変にふわっとしてポルコの耳みたいになっていた。どこかいまいちシマらない。さらに言うと元芸人のマンボウやしろに見えた。
店主に「どうでしょうか?」と鏡で見せられたが「違う」と言えるはずもなく、心の中で泣きながら「イイッスネ」と強がることしかできなかった。できることなら今パーマをかけたところをカットしてもらいたかったが、お金のことを考えたら言えるはずもない。
私は泣く泣く、なけなしの5.000円を払い家に帰った。家に帰ってからも鏡を見たが、見れば見るほどおかしかった。でも、5.000円も払ったのだからと、すぐに切るのはもったいなく感じてしばらくはポルコで過ごすことにした。
そして1ヶ月後、もういい加減切っても許されるだろと、1.500円カットでパーマをかけたところをバッサリ切ってもらった。ようやくパルコから解放され、人間の見た目に戻ることができた。
なぜ似合わなかったのかははっきりわからない。だが、余計なことはするもんじゃないと反省した。それからはもう髪を染めたりいじることはしていない。
やってみてわかったことだけど、中途半端におしゃれはするもんじゃないな。
明日もハレルヤ